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ラブアン法人

ラブアン法人とは|法人税3%の条件と実質活動要件を正確に解説

最終更新日:2026-08-07

「マレーシアのラブアン法人なら法人税3%」という情報は、半分だけ正しく、半分は危険です。3%はLabuan Business Activity Tax Act 1990に基づく実在の税率ですが、2019年以降は業種ごとの実質活動要件を満たすことが適用条件になりました。要件を外すと24%です。さらに日本の居住者が保有する場合、日本側で外国子会社合算税制の判定を受けます。この記事では、ラブアン法人が「使える場合」と「使えない場合」を条件レベルで切り分けます。

ラブアンとは何か:マレーシアの中の別制度

ラブアンは、ボルネオ島の北西沖に位置するマレーシア連邦直轄領の島です。1990年にオフショア金融センターとして整備され、現在はLabuan IBFC(Labuan International Business and Financial Centre)として運営されています。

重要なのは、ラブアンがマレーシアの一部でありながら、会社法も税法も本土と別系統である点です。会社の設立・運営はLabuan Companies Act 1990、課税はLabuan Business Activity Tax Act 1990(LBATA)に基づき、監督官庁はSSMではなくLabuan FSA(ラブアン金融サービス庁)です。

この「同じ国の中に別の税制がある」という構造が、ラブアン法人の特徴であり、同時に誤解の温床でもあります。マレーシア本土の法人税率24%とラブアンの3%は、まったく別の法律に基づく別の話です。

また、ラブアン法人はマレーシアが締結している租税条約のネットワークにアクセスできる場合があります。純粋なタックスヘイブンとは異なり、実体のある法域として位置づけられている点は、国際的な信用の面では有利に働きます。

税率の構造:3%が適用される所得とされない所得

LBATAは、ラブアン法人の活動を2種類に分けます。ラブアン・トレーディング活動と、ラブアン・ノントレーディング活動です。

トレーディング活動には、貿易、マネジメント、シッピング、ライセンシング、その他のサービス提供などが含まれます。これらの所得には、監査済み財務諸表上の純利益に対して3%が課されます。

ノントレーディング活動は、自己勘定での有価証券・株式・預金・不動産の保有を指します。純粋な投資保有に該当する所得は0%です。持株会社としての利用が語られるのはこの規定によります。

ただし、ここに2つの例外があります。第一に、知的財産(IP)から生じる所得はLBATAの対象外とされ、通常の所得税法に基づいて課税されます。ロイヤリティ中心の設計はこの規定で崩れます。第二に、そもそも実質活動要件を満たさない場合、活動区分にかかわらずLBATAの優遇が適用されません。

ラブアン法人の課税区分(2026年8月時点)
活動区分内容税率前提条件
トレーディング活動貿易・サービス・管理・シッピング等監査済み純利益の3%実質活動要件の充足+監査
ノントレーディング活動自己勘定の有価証券・不動産等の保有0%実質活動要件の充足
IP関連所得知的財産から生じる所得LBATA対象外(通常課税)
要件を満たさない場合全所得24%(所得税法による)

実質活動要件(ESR):2019年に何が変わったか

ラブアン法人を語るうえで最も重要な変更が、2019年に施行された実質活動要件(Economic Substance Requirements)です。OECDの有害税制対抗プロジェクトを背景に、「登記だけの箱に優遇税制を与えない」という国際的な潮流を受けた改正でした。

内容は、業種ごとに「ラブアンにおける常勤従業員の最低人数」と「ラブアンにおける年間の最低運営支出額」を定めるものです。たとえばラブアンのトレーディング会社では、常勤従業員2名・ラブアンでの年間運営支出RM10万といった水準が典型例として挙げられます。純粋持株会社(pure equity holding)については従業員要件が緩和される一方、ラブアンでの管理支出と取締役会の開催が求められる扱いになっています。

具体的な数値は業種によって異なり、規則の改正も継続的に行われています。設立を検討する段階では、自社が該当する業種の最新の要件をLabuan FSAまたは登録エージェントに確認することが必須です。

そしてこれが実務上の要点ですが、要件を満たすためのコストは決して小さくありません。ラブアン島に常勤の従業員を2名雇い、現地で年間RM10万を支出する。これは「節税のために作った会社」にとって、しばしば節税額を上回る負担になります。ラブアン法人が有効に機能するのは、この固定費を吸収できるだけの利益規模がある場合に限られます。

  • 2019年から業種別に実質活動要件が導入された
  • 要件は「常勤従業員の最低人数」と「ラブアンでの年間運営支出額」の2軸
  • トレーディング会社は常勤2名・年間RM10万程度が典型例(業種により異なる)
  • 純粋持株会社は従業員要件が緩和されるが、管理支出と取締役会開催が必要
  • 要件を満たさない場合、優遇税制は適用されず24%課税
  • 数値は改正されるため、最新の規則を必ず確認する

マレーシア国内との取引:損金算入制限という壁

2019年より前、ラブアン法人はマレーシア国内の居住者との取引やリンギット建ての取引に制限がありました。現在この制限は撤廃されていますが、代わりに別の形の制約が置かれています。

それが、マレーシア本土の法人がラブアン法人に支払う費用の損金算入制限です。利子、賃借料、その他の支払いについて、支払側の本土法人で一定割合が損金として認められません。これにより、本土法人の利益をラブアン法人に移転して税率差を取る、という構成は実質的に封じられています。

したがって、ラブアン法人が経済合理性を持つのは、取引相手が国外にいる場合です。日本や第三国の顧客に対してサービスや商品を提供し、その対価をラブアン法人が受け取る構成であれば、この制限にはかかりません。

マレーシア国内向けにビジネスをしたいなら、答えは本土のSdn Bhdです。ラブアン法人を無理に使う理由はありません。

日本側の論点:外国子会社合算税制をクリアできるか

ここが日本人にとって最大の関門です。日本には外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)があり、租税負担割合20%未満の外国関係会社について、経済活動基準を満たさない場合、その所得を日本の株主に合算して課税します。

ラブアン法人の税率は3%であり、20%を大きく下回ります。したがって、日本の居住者・内国法人が持分50%超を保有する場合、次の4つの経済活動基準をすべて満たしていることを説明できなければ、合算課税が発生します。事業基準(主たる事業が株式保有等でないこと)、実体基準(本店所在地国に事務所等を有すること)、管理支配基準(本店所在地国で事業の管理・支配・運営を自ら行っていること)、所在地国基準または非関連者基準です。合算の対象となるのは持分5%以上の株主です。

さらに、実体を欠くペーパーカンパニー、事実上のキャッシュボックス、ブラックリスト国所在の会社に該当すると判定された場合は、租税負担割合30%未満で会社単位の合算課税となる、より厳格な取扱いを受けます。

実務上の結論はこうです。日本に住んだままラブアン法人を保有して税負担を下げる、という設計は成立しません。制度を活用するなら、株主自身がマレーシアの居住者となり、ラブアンに実体(事務所・従業員・意思決定)を置くところまでを一体で設計する必要があります。そして日本を出国する際には、国外転出時課税(対象有価証券等1億円以上)の検討も避けて通れません。

なお、皮肉なことに、日本側の経済活動基準を満たすために必要な「実体」と、マレーシア側の実質活動要件が求める「実体」は方向性が一致しています。どちらも「本当にラブアンで事業をしているか」を問うています。逆に言えば、実体を作る覚悟があるなら、両方の要件を同時に満たす設計は可能です。

設立の手順と費用

ラブアン法人は、Labuan FSAが認可した登録エージェント(トラストカンパニー)を通じてのみ設立できます。個人が直接申請することはできません。この点がSdn Bhdとの大きな違いです。

手順は、エージェントの選定、事業内容と活動区分の確定、社名の予約、株主・取締役のデューデリジェンス(本人確認・資金源の確認)、定款の提出、登録という流れです。デューデリジェンスは近年厳格化しており、資金の出所に関する説明を求められます。

費用は、設立でUSD3,000〜6,000程度、年間の維持費でUSD2,500〜5,000程度が一般的な相場です。これに加えて、監査費用(トレーディング活動は監査必須)、そして実質活動要件を満たすための人件費とラブアンでの支出が実費で乗ります。

期間は、書類が揃っていれば2〜4週間程度です。ただし銀行口座の開設には別途時間がかかり、近年は審査が厳しくなっているため、余裕を見た計画が必要です。

ラブアン法人の設立・維持コストの目安(2026年8月時点)
項目目安備考
設立費用(エージェント経由)USD3,000〜6,000程度登録料・定款作成・初年度の登録住所を含むことが多い
年間維持費USD2,500〜5,000程度登録エージェント費用・登録住所・年次届出
監査費用USD1,500〜トレーディング活動は監査必須
実質活動要件の充足常勤従業員の人件費+年間支出下限業種ごとに要件が異なる
設立期間2〜4週間程度銀行口座開設は別途1〜3か月

結論:ラブアン法人が向いている人、向いていない人

ここまでの条件を整理すると、ラブアン法人が機能する条件は明確です。

向いているのは、①顧客が国外にいて、②マレーシア(できればラブアン)に実体を置く意思があり、③自身がマレーシアの居住者となる予定で、④実質活動要件の固定費を吸収できる利益規模がある場合です。この4条件が揃えば、ラブアン法人は合法的かつ有効な選択肢です。

向いていないのは、①日本に住み続けたまま節税だけを目的とする場合、②マレーシア国内の顧客が中心の場合、③IPロイヤリティが主な収入源の場合、④年間の維持コスト(実質活動要件の充足費用を含む)を上回る利益がまだ出ていない場合です。

そしてどちらの場合でも、実行の前には日本とマレーシア双方の専門家に確認してください。この領域は、制度の理解が浅いまま実行すると、節税どころか追徴課税という逆の結果になります。

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出典

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本土のSdn Bhdかラブアン法人か、資本金をいくらにするか、ビザは取れるか、日本側の合算税制はどうなるか。順番を間違えると後戻りできません。まずは無料相談で、あなたの事業実態に合う設計を整理できます。

よくある質問

ラブアン法人の設立に、マレーシアへの渡航は必要ですか?

設立手続き自体は登録エージェントを通じて進むため、書類のやり取りで完結する場合もあります。ただし銀行口座の開設では、多くの金融機関が取締役本人との対面面談を求めます。またマネーロンダリング対策の観点からデューデリジェンスは年々厳格化しており、実体の確認を目的とした訪問が実務上必要になるケースが増えています。渡航なしで完結する前提では計画しないほうが安全です。

ラブアン法人でマレーシアの就労ビザは取れますか?

ラブアン法人のディレクター・従業員向けのワークパーミット制度があり、これを利用してマレーシアに滞在することは可能です。家族の帯同も制度上想定されています。ただし要件は厳格化の傾向にあり、法人の実体、払込資本、ディレクターの役割などが審査されます。またビザの発給要件は運用の変更が頻繁なため、申請時点の最新要件を登録エージェントまたはLabuan FSAに確認してください。

ラブアン法人は「タックスヘイブン」ですか?

ラブアンはOECDの基準に沿って実質活動要件を導入し、情報交換の枠組みにも参加しているため、いわゆるブラックリスト型のタックスヘイブンとは位置づけが異なります。ただし日本の外国子会社合算税制の判定においては、税率が3%である以上、租税負担割合20%未満の外国関係会社として扱われます。「ブラックリストではない」ことと「日本の合算税制の対象外である」ことは別問題です。

実質活動要件を満たしているかは、誰が判断しますか?

最終的にはLabuan FSAおよびLHDN(内国歳入庁)が判断します。ラブアン法人は年次の申告において、実質活動要件の充足状況を報告する必要があります。要件を満たしていないと判定された場合、その課税年度についてLBATAの3%/0%は適用されず、所得税法に基づく24%課税となります。要件充足の証跡(雇用契約、給与支払記録、ラブアンでの支出の証憑、取締役会議事録)は必ず保存してください。

利益がいくらからラブアン法人は割に合いますか?

一概には言えませんが、維持費と実質活動要件の充足費用を合計すると、年間で数百万円規模の固定費が発生するのが通常です。本土Sdn Bhdの24%(中小軽減なら15〜17%)との税率差で、この固定費を回収できるかが判断基準になります。単純計算では、税率差が20ポイント前後、固定費が年500万円なら、課税所得2,500万円以上が損益分岐の目安になります。実際の数値は事業内容と要件水準で変わるため、個別に試算してください。

免責事項

本サイトの情報は執筆・更新時点の調査に基づくものであり、マレーシアの会社法・税制・ラブアンの実質活動要件・ビザ要件、および日本の国際課税制度は予告なく変更される場合があります。また、実際の税務上の取扱いは個別の事業実態によって大きく異なります。本サイトの情報は一般的な解説であり、税務・法務上の助言ではありません。実行の前には必ずSSM・LHDN・Labuan FSAなどの公的機関の最新情報を確認し、マレーシアおよび日本の有資格専門家(会計士・税理士・弁護士)にご相談ください。本サイトの情報に基づく判断・行動の結果について、運営者は責任を負いかねます。