マレーシア法人税
マレーシアの法人税【2026年】税率24%・中小軽減・配当・SSTを解説
最終更新日:2026-08-07
マレーシアの法人税率は24%。この数字だけを見ると日本(実効約29.7%)よりやや低い程度で、特別に有利には見えません。しかしマレーシアの税制の実際の魅力は税率ではなく、①中小企業への軽減税率、②配当のシングルティア制度(株主段階で非課税)、③キャピタルゲインへの限定的な課税、という構造にあります。この記事では、マレーシア法人が実際に負担する税金の全体像を、申告スケジュールまで含めて整理します。
法人税率:標準24%と、中小企業の段階税率
マレーシアの法人税の標準税率は24%です。居住法人・非居住法人ともに、マレーシア源泉所得に対してこの税率が適用されます。
中小企業(SME)に該当する場合は、課税所得の一部に軽減税率が適用されます。適用されると、課税所得のうち最初のRM15万に15%、RM15万超RM60万以下の部分に17%、RM60万を超える部分に24%という段階構造になります。
SMEの判定要件は、事業年度開始時の払込資本がRM250万以下であること、かつ当該事業年度の売上高がRM5,000万以下であることです。加えて、払込資本RM250万を超える会社と資本関係でつながっている場合は対象外とする規定があります。日系企業の現地子会社が軽減税率を使えないのは、多くの場合この関連会社要件によります。
実額で見ると、課税所得RM60万の中小企業では、標準24%なら税額RM14.4万のところ、軽減税率適用でRM10.05万。年間でRM4.35万(約150万円)の差です。設立時の資本設計がそのまま税負担に効いてくるため、払込資本をRM250万以下に抑えるかどうかは意識的に判断すべき論点です。
| 対象 | 課税所得 | 税率 |
|---|---|---|
| 中小企業(SME) | 最初の RM150,000 | 15% |
| 中小企業(SME) | RM150,001〜RM600,000 | 17% |
| 中小企業(SME) | RM600,001 以上 | 24% |
| SME以外の居住法人 | 全額 | 24% |
| 非居住法人(支店を含む) | マレーシア源泉所得 | 24% |
| ラブアン法人(要件充足時) | トレーディング純利益/ノントレーディング | 3%/0% |
配当:シングルティア制度で株主段階は原則非課税
マレーシア法人税の実務上、最も大きな利点がシングルティア(single-tier)配当制度です。
仕組みはシンプルです。法人段階で24%(またはSME軽減税率)の法人税を負担した後の利益から支払われる配当は、株主の段階では課税されません。法人株主でも個人株主でも同じです。日本のように法人税を払った後の利益に対して、さらに配当課税(所得税・住民税で最大約20〜55%)がかかる二重構造がありません。
この差は大きく、たとえば課税所得RM100万の中小企業を考えると、法人税負担後の手取りをそのまま配当として受け取れます。日本の法人であれば法人実効税率約29.7%の後にさらに配当課税がかかるため、株主の手元に残る金額には相当の開きが生じます。
ただしYA2025から、個人居住者が年間RM10万を超えて受け取る配当所得に対して2%の課税が導入されました。高額配当を受け取る個人株主には影響しますが、税率自体は限定的です。
なお、日本の居住者がマレーシア法人から配当を受け取る場合は、日本側で課税されます。シングルティア制度の利点を享受するには、株主自身がマレーシアの居住者である必要がある点に注意してください。
キャピタルゲイン税:2024年に部分的に導入された
マレーシアは長らく、株式譲渡益などのキャピタルゲインに課税しない国として知られてきました。この点は現在も部分的に維持されていますが、2024年3月以降、非上場株式の譲渡益に対するキャピタルゲイン税(CGT)が導入されています。
対象となるのは、マレーシア国内の非上場会社の株式を法人・組合等が譲渡した場合の譲渡益です。取得時期に応じて、譲渡益に対する税率、または譲渡対価の総額に対する低率課税を選択できる仕組みが設けられています。
一方で、上場株式の譲渡益は引き続き課税対象外です。また不動産およびその関連会社の株式の譲渡については、従来から不動産譲渡益税(RPGT)が別制度として存在し、保有期間に応じた税率が適用されます。
事業売却(M&A)を出口として想定する場合、この点は設計に影響します。株式譲渡か事業譲渡か、譲渡主体が法人か個人か、対象が上場株か非上場株かで課税関係が変わるため、出口を意識した保有形態を初期から検討しておく価値があります。
SST(売上・サービス税):付加価値税ではない点に注意
マレーシアには日本の消費税やシンガポールのGSTに相当する付加価値税はなく、代わりにSST(Sales and Service Tax)が課されます。2015年から2018年まではGSTが導入されていましたが、廃止されてSSTに戻った経緯があります。
SSTは2つの税から構成されます。売上税(Sales Tax)は製造業者や輸入者の段階で課される単段階課税で、税率は品目に応じて5%または10%です。サービス税(Service Tax)は指定されたサービスの提供に課され、税率は6%が基本で、一部のサービスには8%が適用されます。
2025年7月からは課税対象サービスの範囲が拡大され、これまで対象外だった業種にもサービス税の登録義務が及ぶようになりました。自社のサービスが課税対象かどうかは、事業開始前に確認すべき項目です。
重要な違いとして、SSTは付加価値税ではないため、日本の消費税のような仕入税額控除の仕組みが基本的にありません。仕入れ段階で負担したSSTは原則としてコストになります。この点は価格設計に直結します。
| 区分 | 課税対象 | 税率 | 登録義務の目安 |
|---|---|---|---|
| 売上税(Sales Tax) | 製造・輸入される課税物品 | 5% または 10%(品目による) | 年間売上が閾値を超える製造業者 |
| サービス税(Service Tax) | 指定された課税サービス | 6%(一部8%) | 業種別の売上閾値を超える事業者 |
| 仕入税額控除 | — | 原則なし | 付加価値税ではないため |
源泉徴収税と移転価格:国際取引での論点
マレーシア法人が非居住者に支払いを行う場合、源泉徴収税(Withholding Tax)の対象になることがあります。代表的なものは、使用料(ロイヤリティ)10%、技術サービス料10%、利子15%、契約支払(工事等)10%+3%です。
ただし日本とマレーシアの間には租税条約が締結されており、条約に基づく軽減税率が適用される場合があります。適用を受けるには居住者証明書などの手続きが必要です。日本の親会社にロイヤリティや技術指導料を支払う設計をする場合、この源泉徴収税を織り込まないと想定外のコストが生じます。
移転価格税制についても、マレーシアは文書化義務を課しています。関連者間取引がある法人は移転価格文書(TPD)の作成が求められ、一定の売上規模と関連者取引規模を超える場合はフルスコープの文書化が必要です。閾値以下の場合も簡易版の文書化が求められ、税務調査で提出を要求されます。
日本の親会社と現地法人の間で、商品の売買、経営指導料、ロイヤリティ、資金貸付などの取引がある場合は、価格の妥当性を説明できる資料を毎期整備しておく必要があります。近年、マレーシア税務当局の移転価格調査は厳格化しています。
- 使用料(ロイヤリティ):10%
- 技術サービス料:10%
- 利子:15%
- 契約支払(工事等):10%+3%
- 日馬租税条約による軽減の可能性あり(居住者証明書等が必要)
- 関連者間取引がある法人は移転価格文書の整備が必須
申告スケジュール:決算期は自由、ただし予定納税がある
マレーシアでは決算期を自由に設定できます。日本の3月決算に合わせることも、12月決算にすることも可能です。グループ会計の都合で親会社と揃えるケースが一般的です。
法人税の確定申告(Form C)は、事業年度終了日から7か月以内に提出します。12月決算であれば翌年7月末が期限です。提出は電子申告(e-Filing)で行います。
見落とされやすいのが予定納税です。マレーシアでは、事業年度開始の30日前までに翌期の見積税額(CP204)を提出し、その見積額を12回に分割して毎月納付します。新設法人には初年度の猶予規定がありますが、2年目以降は毎月の納付が発生します。
見積額が実際の税額を大きく下回った場合には、差額に対してペナルティが課される規定があります。事業計画に基づいた妥当な見積りと、期中の修正申告(第6月目・第9月目に改訂が可能)を活用してください。
加えて、SSTの登録事業者は2か月ごとの申告・納付、従業員がいる場合は毎月の源泉徴収(MTD/PCB)とEPF・SOCSOの納付が発生します。これらのコンプライアンス実務は、現地の会計事務所に外注するのが一般的です。
| 項目 | 期限 | 備考 |
|---|---|---|
| 見積税額の提出(CP204) | 事業年度開始の30日前 | 新設法人には猶予規定あり |
| 予定納税 | 毎月(12回分割) | 第6月・第9月に見積額の改訂が可能 |
| 法人税確定申告(Form C) | 事業年度終了から7か月以内 | 電子申告 |
| SST申告 | 2か月ごと | 登録事業者のみ |
| 源泉徴収(MTD/PCB) | 毎月15日まで | 従業員の給与から |
| EPF・SOCSO | 毎月15日まで | 従業員の社会保険料 |
| 年次申告(Annual Return) | 設立応当日から30日以内 | SSMへ提出(会社法上の義務) |
出典
よくある質問
マレーシアの法人税は日本より安いですか?
標準税率で比較すると、マレーシア24%に対して日本の法人実効税率は約29.7%で、マレーシアがやや低い水準です。ただし実質的な差はより大きくなります。マレーシアでは中小企業に15〜17%の軽減税率があり、さらに配当のシングルティア制度により株主段階で追加課税がありません。日本では法人税の後に配当課税がかかるため、株主の手取りベースで比較すると差は拡大します。ただし日本の居住者が受け取る配当は日本で課税されるため、この利点を得るには居住地の設計が前提になります。
中小企業の軽減税率を使うにはどうすればいいですか?
事業年度開始時の払込資本をRM250万以下に抑え、かつ当該事業年度の売上高をRM5,000万以下に収めることが基本要件です。加えて、払込資本RM250万を超える会社との資本関係があると対象外になる規定があるため、日本の親会社の資本規模も判定に影響します。就労ビザ申請のために資本金を増やす必要がある場合、軽減税率の要件と両立するかを設立前に検討してください。
マレーシアに消費税はありますか?
日本の消費税に相当する付加価値税はありません。代わりにSST(売上税・サービス税)が課されます。売上税は製造・輸入段階で5%または10%、サービス税は指定サービスに6%(一部8%)です。SSTは付加価値税ではないため仕入税額控除の仕組みが基本的になく、仕入れ時に負担した税額はコストとして残ります。2025年7月から課税対象サービスの範囲が拡大しているため、自社が登録義務の対象かを確認してください。
海外で稼いだ所得はマレーシアで課税されますか?
マレーシアは属地主義を基本とし、原則としてマレーシア源泉所得に課税します。ただし2022年以降、居住者がマレーシアに送金した国外源泉所得については課税対象とする改正が行われ、その後、一定の条件を満たす場合の免除措置が設けられています。法人については、実質的な経済活動要件などを満たす場合の配当所得の免除が中心です。個人については免除措置の期限が延長されています。制度の変更が続いている領域のため、必ず最新のLHDNのガイドラインを確認してください。
グローバルミニマム課税(Pillar 2)の影響はありますか?
影響を受けるのは、連結売上高が7.5億ユーロ以上の多国籍企業グループです。マレーシアも国内最低課税制度(QDMTT)を導入しており、対象となる大規模グループでは実効税率15%までのトップアップ課税が生じます。中小規模の法人設立や個人事業の法人化には直接の影響はありませんが、日系大手企業の現地子会社では検討事項になります。
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